最適なCRM(Customer Relationship Management)をご提案します。

雑誌連載  [ 5.経営者、営業トップのための情報化 ]

●2005年はデジタル社会10年目の節目

10年前に何が語られていたか、IT会社のセールストークであるが、私が当時書いていた3つの文章をご紹介したい。果たして今どうなっているだろうか? ◎IT革命は産業革命と同じ 産業革命は機械という道具をもたらし、企業の生産性を大幅にアップさせ、資本を持っている企業(機械を買える人)が主導権を握ることができた。今起きようとしている情報革命は、情報技術という道具を利用し、情報をうまく取り入れた企業が主導権を握ることができる。情報化についていけない会社は淘汰され、一方で企業規模に関係なく、経営と情報技術がうまく融合した会社が大きな飛躍を遂げる。
◎米国の情報化投資の考え方
 情報化投資は必ず効果が出るということが米国の一般的な企業の考え方である。現に、米国では不況克服の手段として、リエンジニアリングを行いながら活発な情報関連投資をしてきた。米国の設備投資の資料をみると、92年から94年までの3年間で、実質設備投資増加額の約7割が情報関連投資で占められており、情報化を徹底的に行いホワイトカラーの生産性を向上させることで、米国企業は復活を果たした。
◎営業部隊のメンテナンスが必要
 機械をよい状態に保つためにメンテナンスが必要なのと同じで、営業部隊をよい状態に保つためにはメンテナンスが必要です。人間を機械のように扱っているかのように思われるかもしれませんが、そうではありません。機械ですらメンテナンスをしてもらっているのに、なぜ人間にはメンテナンスをしないのか。メンテナンスという言葉が悪ければ、営業社員への投資と置き換えてもらうことで納得して頂けると思います。コンピュータを使用した営業環境のインフラを構築し、営業を行いやすくする環境を提供することは、営業の価値への投資です。環境や手段があれば社員は必ず仕事にチャレンジします。

●ITテクノロジーにとっても10年前の1995年は転換点だった

それは次の3つの出来事「Windows95の発売」「リナックスの台頭」「インターネットの普及」である。あれから10年が経ち、性能や機能の向上はもちろんのこと、ユーザの習熟度もあがって来た。会社で言えば新卒で入り10年経った中堅どころである。新人と中堅では求めているものが違うように、ITに求めるものも10年経って様相が違ってきている。わかりやすいところで言えば、10年前はどうすれば簡単に入力できるか、キーボードに慣れるためにはどうするかがひとつのテーマになっていたが、今は10年分の溜まったデータをどうビジネスにつなげるかが課題になってきている。今回紹介したいのは、この流れとは別に、10年経っても変わらないものも明確になってきたことであり、それが経営とITの関係にとって重要な鍵になっていくという話しである。そして、そのことに対して経営者、営業トップが考えるべきポイントをご紹介したい。

●データのないところに成長なし

これはリサーチ業界のセールストークである。データがないまま目分量やどんぶり勘定で経営していても成長できない。きちんとデータで裏づけを取りながら進めなければ持続的な成長はできないというものである。これは、データ化すること、定量化することが重要であるという示唆であるが、すでにデータ化が完了している企業もあれば、まだデータ化すらおこなわれていない企業も存在する。このことを営業組織に置き換えて考えてみると、営業マネージャーが扱える営業社員数には限界があり、通常は、マネージャーが管理できる営業社員の適正人数は、5人程度と言われている。それがピラミット組織を支えている理由にもなっている。昨今の営業マネージャーは商談に出ることはもちろん、出張や会議などやらなければならない仕事がたくさんあり、一人一人の営業社員の面倒を見ることは時間的に無理がある。時間が足りない中で、何か積極的にマネジメントを行うためには、空いた時間でまとめて見たり、顧客別に今までの商談履歴を一覧で見たり、つまり、見たいときに必要な情報を瞬時に見るなど時間を有効に使えるような仕事環境が必要で、これこそがデジタル化、データ化であり、さらにデータ化が進めば、「会議用の報告資料を1時間かけてパソコンで作成したが、50分は色々な資料から転記する時間だった」というような作業からも開放され、客観性が担保されたデータをもとに一気に仕事の生産性を向上させることができるわけである。しかし、データ化が完了した企業が、すべてこの通りになっているかと言えば、それは違う。そこにどんな原因が存在するのだろうか。それが今回テーマにする10年経っても変わらないものであり、このような状況下で経営者は何を見て情報化を判断すべきなのだろうか?

●情報化投資をする際に見るべき経営者のポイント

たとえば、1000万円のシステムの見積書が来た。何社見積もりをとっても似たり寄ったりである。また、1社だけ安いものはあるのがその違いがよくわからない。相場らしいが、それが自社にとってどの程度貢献するものなのか。それを考えるにあたって、経営者がこだわるべきポイントをご紹介する。

◎トップのパソコンに表示される情報にこだわる

顔の見える経営者がちらほら出てきたが、ほとんどの経営者はなにをやっているのか見えない。しかし、「いかなる組織も、その"成果"はトップマネジメントにかかっている」と言われるように経営者の役割は日増しに重要になってきている。トップマネジメントとは会社の方向付けを行うことであり、現在ではなく将来の部分に関するマネジメントをすることある。そのためにはまず現在(現状)がわかっていないとできないので現在を知るために、あらゆる報告があがってくる仕組みを作る。ただ、報告をあげる側からすると、悪い情報はなかなか報告しづらい。このため経営者は現状を知っているようで知らないという状態に陥る可能性が高く、不祥事が起きてしまった企業の経営者はまさにそんな感じではないだろうか。じゃあ、どうするかといえば、自ら情報を取りにいける仕組みを作ればいいということになる。もちろん、情報を入れる側が存在するため、完全に恣意性は排除できないが、なになにの報告をくれと頼んでから、出てくる報告とは当然違うものになる。つまり、トップのパソコンから見ることができる情報、見たい情報が備わったシステムであるか、まずはそこにこだわって欲しい。

◎情報システム部の長にこだわる

経営者として、どんな人材を情報システムの長にすべきかこれでその会社のIT化は大きく変わると言ってよい。従来の情報システム部のミッションは、まずはシステム運用(インフラの安定)にポイントが置かれている。わかりやすい例でたとえると、CRM/SFAは、使わないと業務が止まってしまうようなシステムではないが、もし基幹システムが止まってしまうようなことが起これば多くの仕事がストップしてしまう。そんなことが起こらないように細心の注意を払っているのである。このことは逆に、情報システム部はCRM/SFAにはあまり注意を払うべきものがないと思っていると言い換えることができる。具体的には、よく営業支援システムのプロジェクトチームが情報システム部と営業部で編成されるが、概ねどの企業でも情報システム部と営業部は仲が悪い。それは、営業は売上げをあげるためのシステムを考えている一方で、情報システム部は安定した止まらないシステムを考えるからであり、そこに接点がない。このことからも、CRM/SFAのシステム構築は、営業側から責任者を任命し、当然ながらその責任者はITのプロではないため、そのことを踏まえて十分にサポートできるような情報システム長を置かなければならない。また、その情報化投資が経営に対してどれくらいのインパクトや利益貢献をもたらすものなのか、そのような視点から判断できるような人材でなければならない。

◎部分最適化ではなく全体最適化にこだわる

経営者にしかできないことがある。それは部分最適化ではなく全体最適化になるように指示することである。これもよくあることであるが営業部と営業企画部が異なる情報で判断しており組織不全を起こしているケースである。つまり、営業部は、「企画部は現場のことがわかっていない」と思い、営業企画部は、「営業部は市場のことがわかっていない」と思っている。これは、両者が見ている情報が違うから起こっている現象で、営業部は、「現場の感触から得た情報」を中心に活用し、営業企画部は、「外部の市場情報」を中心に見ているからである。一歩進んで、そのような問題を解決するために、営業企画部で「顧客の生の声をレポートにして提出してほしい」と言い出すが、顧客の声をまとめて欲しいと言われても、忙しい営業マンにとっては、仕事が増えるだけで、また、すべてを覚えているわけでないのでどうしても最大公約数的な情報しか渡せず、そこにかなりの時間とコストが費やされる。このように部署の垣根を越えて情報を活用できる仕組を作ることが経営者の役割であり、これこそ企業内情報ネットワークを通じて、営業、企画、開発、生産、サービスなどの全部門で同じ情報を共有し活用する仕組みでなければならない。

◎情報を現金化することにこだわる

情報(IT)そのものではお金は生まれない。またデータを蓄積しただけでもお金は生まれない。あえて抽象的な表現を用いれば情報は交換してはじめてお金が生み出される。つまり、顧客と情報を交換出来てはじめて現金化される。そしてその担い手こそがまさに営業になる。さらに言うと、顧客と交換しない、交換できない情報はいくら蓄積し活用しても現金化されることはない。結局、情報化を利益につなげるためには、情報をいかに顧客と交換するか、そこに尽きる。そのコミュニケーションをインターネット上ですべて自動化できるようなドットコム企業でない限り、人が介在することになり、IT革命といっても、結局最後は人が重要になる。

◎4つのコストにこだわる

当たり前のことであるが、投資コストそのものを低く抑えれば投資コストの回収はしやすくなる。1000万円の投資と1億円の投資を考えてもらえば、どちらが回収しやすいかという話である。そして回収できれば、さらに追加投資を繰り返せばいい。それがIT投資の王道であり、またキャッシュフロー経営にもつながてくる。このコストであるが、CRM/SFAは目に見えるコストとは別に、目に見えづらいコストが発生する。それについても経営者はこだわる必要がある。
□情報の定義、器のためのコスト
既存の顧客情報が使えるという幻想があるが、基幹システムの顧客情報は、あくまでも請求書を適正に処理するための情報であり、繰り返しになるが顧客と情報を交換することを前提にした必要な顧客情報ではない。また、営業で使うのであれば、請求書発行単位ではなく、企業単位や営業単位など顧客情報を名寄せする必要も生じ、別立ての顧客情報システムが必要になる。
□情報の収集コスト
器だけ出来たとしても、そこに情報を入力するのは人である。また、情報を得るための活動コストも当然必要になる。
□情報のメンテナンスコスト
極端なことを言えば、顧客情報は入力した時点で陳腐化が始まる。顧客は刻々と変化しているものであり常に最新情報にするためのコストが必要になる。
□情報の活用コスト
デキル営業であれば勝手に吸収して自分のものにするが、多くの社員にとってはそれが出来るようにするための教育というコストが必要になる。



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